あまり想像がつかないかもしれませんが、お寺のお正月はとっても忙しいです。
個人的に、特に元旦は一年で最も体力的につらい日のトップ5に入ります。前日大晦日は極寒の中、深夜二時頃まで除夜の鐘をつとめ、ほとんど眠らず早朝から一年のはじめの坐禅と勤行を行い、そのまま一日中お檀家さんの御年始の挨拶をお受けするのです。
またお正月はじめの三日間を特に「三元」と呼び、今年一年の無事と平和、萬福多幸を祈願する三元祈祷の法要を三日間かけて行います。そうして祈りをこめた新年のおふだをお檀家さんにお配りし、その後当寺では一月七日にお寺の役員さんが集まって賀詞会(新年会)を行う慣習となっています。
そんなこんなで、お正月とはいえ気が抜けない毎日が続き、七日の賀詞会が終わるころにはもうクタクタです。
当寺では新年会で七草粥を出しますが、この疲れた身体に七草粥が染み渡ります。
かつて貧しかった時代には、栄養が不充分な日常にあって、新春に萌芽した滋養たっぷりの山野草をおかゆと共に摂ることで大地の栄養を補給して健康維持を図り、あわせて邪気を払って幸福を祈るためのものであったと思います。
それが今では七草がゆはお正月の間豪勢な食事を食べ過ぎて疲れた胃を癒すためのものという通説が多勢ですが、時代が大きく変わり、食が豊かになったためにその意味すら逆転してしまったのだと思います。
もちろん、それが悪いというわけではなく、現代には現代の事情に応じた七草がゆの意味があって良いと思います。
ごちそうを食べ過ぎた人だけでなく、私のように、お正月はいつも以上に忙しく働いている職業の方もたくさんおられるでしょう。休む人がいればその間休めない人も当然いるわけですから。
お正月忙しくすごして頑張った方、お疲れ様でした。
そうして疲れた身体を優しく癒すための七草がゆ、是非とも自分で炊いて召し上がって下さい。
詳しい作り方は過去の当ブログ、または年末に刊行されたばかりの新刊書、『粥百選』に詳しく掲載されています。是非ご一読下さい。