満月汁

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典座ネットブログ2010.9.19の記事

「NHK-FM トーキングウィズ松尾堂」出演、無事放送が終わりました。
自分の声を聞くというのはなんともまあお恥ずかしいものですね。
途中あまりの恥ずかしさにラジオの前から逃げたくなりました。
しかしそれをぐっとこらえてしっかり聞き、色々と反省をしなくては成長につながりません。
反省点は多すぎて書けないくらいですね。

聞くことができなかった方は番組ホームページのトピックスをご覧下さい。

放送でも触れましたが、禅では悟りの境涯を自然の風物になぞらえて表現することが多いのですが、なかでも「月」は多くの禅僧に親しまれてきました。

たとえば道元禅師の有名な和歌「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり」、または宝慶寺に伝わる有名な「道元禅師観月の像」は、道元禅師が月を眺めていたお姿といわれています。近年公開された映画「禅 ZEN」にも、北条時頼と道元禅師が池に映った月を題材に問答を交わすシーンが描かれています。


道元禅師観月図(複製品)

中でも特に「月」にちなんだ話題として今回ご紹介したいのは、永平寺を開いた道元禅師が中秋の名月を詠んだ和歌です。

厳しい修行と、正伝の仏法の布教にひたすら生涯を貫いてきた道元禅師ですが、1253年、重い病に罹られてしまいます。禅師は最後の時まで永平寺に留まりたいと願っておられましたが、医師の元での療養を願う弟子たちの説得に応じ、永平寺の住職を一番弟子である懐奘禅師に譲って京都へ旅立ちます。

そして道元禅師は京都にて、十五夜の晩に中秋の名月を眺めながら和歌を詠まれました。

また見んと おもひしときの 秋たにも こよひの月に ねられやはする

(重い病にかかり、もう今年の秋の月は見ることができないかも知れない、となかば覚悟をしていたが、こうして再び美しい月を眺めることができた。今宵はこのよろこびに寝られそうにもない)

道元禅師はこの句を遺したわずか十数日の後、この世を去られます。
この句にはさまざまな解釈があります。
前半部分を「またみたいと思っていた秋の月をこうして今年も見ることができた」と解釈するのはほぼ共通していますが、問題は後半です。
「今宵の月を見ているとなかなか寝付くことができない」「眠るのが惜しい」と訳すのはいいとして、どうして寝ることができないかの理由が解釈のポイントです。

「病に冒された身に、死への不安や苦悩を表現している」「来年はもう見ることができない月を名残惜しそうに眺めている」という解釈をよくみかけますが、自らの死を恨み、惜しむような心情はあまりにも俗的な解釈であり、道元禅師の心にはほど遠いのではないか、と思います。
百歩譲って、自らの短命を嘆くとしたら、ただ単に自分自身の寿命の短さを悔やむのではなく、もっと広い立場に立った、これ以上この世で仏法を説くことができなかったことに対する残念な気持ちはあったかもしれません。
道元禅師ほどのお方が、自分の寿命の短い長いに執着すはずもなく、そうした解釈ではこの句の素晴らしさは半減してしまうと思います。

一つの興味深い解釈を紹介します。

「道元禅師はすでにご自身の容態を充分に理解なさっていたし、また禅者としてそれを無理に悲しみ、嘆き、抗うようなことはせず、それを素直に受け入れておられた。すでにこの秋は無理であろう、と覚悟を決めておられたに違いない。
しかし多くの弟子や縁ある方々の手篤い看病や手助けにより、こうして今日の十五夜を迎えることができた。そうした周囲の者への感謝の気持ちがこの句には表れているとみてはどうか。
皆の優しさとまごころに感動して、今宵は心が震えて寝られそうもないよ、という道元禅師の感謝の念を読み取ることができまいか」

そしてもうまもなく、今年の十五夜と、それに続いて道元禅師のご命日(9/29)がやってきます。ここ数年私は、九月二十九日には月にちなんだ精進料理を調え、寺の本堂にお供えして礼拝焼香をし、門下の末席を道元禅師の御遺徳を偲んでおります。
昨日ご紹介した月見の精進料膳、こうした道元禅師の和歌を味わったあとで調理するとより意義深いことでしょう。

今回のお月見精進料理膳のメイン、「満月汁」のレシピです。
確かにかなり手間がかかるのですが、だからこそ道元禅師にお供えする料理としてふさわしいのではないかと思っております。

みてのとおり、すまし汁の真ん中に浮かべたお団子を月に見立て、とろろ昆布を月にかかる雲に、水菜を月に照らされるススキの葉にみたてた料理です。
ダンゴの中には味噌で炒めたクルミが具として入っています。

○満月汁
1 水400mlに昆布15~20gを漬け、一晩おいてダシをとる。
2 長芋100gの皮をむき、ゆでてすりおろす。(フードプロセッサーでも可)
3 すり鉢にみそ小さじ2とみりん小さじ2、酒小さじ1を入れ、よくすりあげる。
4 くるみ30gを包丁で切り、5ミリくらいに細かくする。
5 加熱したフライパンに油小さじ1/2を敷き、4のくるみを炒める。
油が回ったら、3の味噌と砂糖小さじ1、しょうゆ小さじ1を加えて弱火で2分ほど炒める。
6 2を移し、白玉粉50g、上新粉15g、塩少々を加えてよくこね、様子をみながら
水を足し、団子状にまるめる。
7 6を4つにわけ、ラップの上でのばし広げ皮状にし、5の具を包んで団子型にする。
8 7を蒸し器に入れて強火で5~7分ほど蒸す。
9 1の水400ml(昆布ごと)、酒50ml、みりん30ml、薄口しょうゆ5ml、塩少々を鍋で加熱する。
沸騰したら昆布を取り出し、弱火にして2分ほどしたら火を止める。
10 8の団子をお椀に入れ、9のだし汁を張り、とろろ昆布と水菜少々を添える。

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