キンカンの甘露煮

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典座ネットブログ2007.11.28の記事

今年も寒い冬がやってきました。すでに当地では初雪が降り、朝晩厳しい冷え込みが続いております。朝起きてツルツル頭を水で洗って清めると、白い湯気が立ち上るほど、低い気温の毎日が続いています。

初雪

そんな寒い冬にお奨めしたいのが、「金柑の甘露煮」(きんかんのかんろに)です。
昔は砂糖などの甘いものが貴重だったため、甘露煮はお正月やお祝い事の時にしか口にできないご馳走でした。また、非常に手間がかかるため、手間でもてなす精進料理では冬の定番献立とされています。永平寺の精進料理でも、冬の来客膳によく盛られます。
一度作ってしまえば長期保存が効くため、冬の貯蔵食としても珍重され、また彩りも良く、「金」の字が縁起ものとされることからお正月のおせち料理にもよく使われま
す。甘い物が珍しくなくなった現代では、以前ほどはみかけなくなったものの、やはり冬の旬に欠かせない食材として、この時期に出回ります。

金柑には、ミカンの倍ほどのビタミンCがたっぷり含まれています。

ビタミンCは体内でコラーゲンを合成・維持する役割を果たします。コラーゲンといえばお肌をツルツルにすることで今多くの女性が注目していますが、せっかくコラーゲン物質を多くとっても、それを体内でうまいこと活用させる役割のビタミンCが足りなかったら効果がでないのです。そのため、ビタミンCが不足すると肌がカサカサになり、肌荒れ、歯ぐきからの出血などの悪影響が出てしまいます。

金柑

他にも、ガン予防、抗酸化作用による老化防止、疲れの原因となる物質を排泄させる効果、血中コレステロールや中性脂肪を抑える効果などなど、ビタミンCの効果は数多いのですが、その中でもこの季節私にとって嬉しいのは、以下の2つの効果です。

この季節、寒さによって抵抗力が落ち、風邪を引きやすくなります。
私は風邪を引くとすぐに喉に症状があらわれてしまいます。これは声を売りにする和尚としては致命的です。喉がガラガラで法事の時お経の声がイマイチでは、お檀家さんに申し訳がありません。そのためこの季節、風邪の予防にはかなり気を使います。そこで役立つのが金柑のビタミンCです。
ビタミンCは白血球の働きを助けて免疫機能を高め、風邪の予防に効果があります。
またビタミンC自体が病原菌をやっつける力も持っています。
その上、もし風邪にかかってしまった場合、ビタミンCには回復を早める効果もありますので、風邪対策にはビタミンCが欠かせないのです。

私はこの「金柑の甘露煮」を作り置きしておき、一粒食べてから法事に行きます。あるいはこれをとろみと一緒にお湯に一粒入れて、溶かして「金柑湯」として飲むのもオツなものです。これにより、喉の調子が悪くなりがちな冬の時期にも、なんとか美声を?保って読経することができるのです。

また、12月は「師走」とも言うとおり、普段落ち着いている老師でさえも走り回るほど忙しい月です。年内にかたづけなくてはならない仕事がたっぷりあり、あれもやらねば、これもせねば、と時間に追われる日々が続き、知らないうちにストレスが貯まります。
ストレスがたまると、体内ではそれに対抗するために抗ストレスホルモンが分泌されますが、それを生成するのを助けるのがビタミンCなのです。
そのため強いストレスを受けたときにビタミンCが足りないと、イライラすることになります。特に、タバコやお酒をたしなむ人は、ビタミンCが不足しがちなので注意が必要です。
また、柑橘類に含まれるビタミンPは、ビタミンCの吸収を助ける働きがありますが、これはミカンなどの皮の裏の部分に多く含まれているのだそうです。ミカンを食べるときにはふつう皮をむいてしまうのであまり摂取できませんが、この金柑の蜜煮ならば、皮ごと口にできるので都合が良いわけです。

なんだか万能薬のように見えるビタミンCですが、実際には熱に弱く、また水に溶けやすい性質を持っているため、この甘露煮のように長時間煮込んだりする料理の場合、実際にはそれほどたくさんのビタミンCが摂取できるわけではありません。
そう説明すると、すぐに「じゃあ食べても意味がないのか」と判断する方も多いのですが、それはあまりに科学的な数値に頼った二者択一的な思考です。ビタミンCなんて知られていなかった昔から、私たちのご先祖さまは冬には金柑がよい、ということを経験から得ていたのです。昔の知恵を馬鹿にしてはいけません。

すなわち、手間をかけて作ったその心(まあ愛情と言い換えてもいいですけど)が、科学的な数値を超えて食べる者の心に届くのだと思います。
そこには、ビタミンCのサプリメントを味気なくゴクンと飲み込むのとは格段に違った、深い味わいがあります。甘露煮を一粒お湯に入れ、軽くつぶして飲む金柑湯から立ち上る湯気の温かさと、それをゆっくりといただくときの心の余裕が、風邪とストレスを防いでくれるのではないでしょうか。

金柑甘露煮

◎作り方

(金柑10個分、増やすときはそれに応じて調味料などを増やして下さい)

1 金柑の側面に包丁で6本くらいの切れ込みを縦に入れる。ヘタ?を取り除く。
2 360ccの水に塩2.5mlを加え、中火で2を20分くらい煮る。
3 煮汁を捨てて水にさらし、1で入れた切れ込みに串を刺し、中の種を取り除く。
(種だけを取り出し、実の部分はほじらないように注意)
4 3を蒸し器で15分くらい蒸す。
5 鍋に移し、昆布ダシ(または水)100cc、酒50cc、みりん100cc、砂糖10ml、塩少々
で煮込む。沸騰したら弱火にし、内フタかクッキングペーパーをかぶせて
焦がさないように注意しながら煮汁がほとんどなくなるまで煮詰める。
6 火を止めたら早めにタッパなどの容器に移す。(冷えると蜜が鍋に張り付きます)

※4の蒸す過程を省く場合は、その分5で水を100cc増やし、煮る時間を長くします。

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