くわいの煮物

スポンサード リンク




典座ネットブログ2007.12.10の記事

今回はおせち料理に欠かせない食材、「くわい」です。
くわいはオモダカ科の水生植物で、昔は田んぼの周りに生えていました。

歴史的にはかなり古く、室町時代の書物にすでに記載されています。しかしそのころの品種はまだ積極的に食べられてはいなかったようで、江戸時代になり、中国産のくわいがわが国に根付いてから、一般に食べられるようになったといわれます。
しかし最近はくわいを知らない若い人が多いようで、精進料理のお膳でお出ししても、「何これ?」と不思議そうな顔をする方がたくさんおられます。
しかしくわいの形を見ればわかるとおり、丸い玉の部分から芽がにょきっと出ております。これが「めでたい」とか、芽がぐんぐん伸びて「出世する」「家が繁栄する」という縁起ものとして長らくおせち料理の定番だったのです。また、時期的にもちょうど今頃から旬になるため、永平寺でもこの時期来客膳などの献立に良く使われます。

おせち料理を自宅で作らなくなりつつあるこの時代、くわいを知らない若者が増えているのは残念なことです。ぜひこのブログのレシピを読んでめでたいくわいを食べて欲しいと思います。

くわい

くわいは漢字で書くと「慈姑」。いろいろな説がありますが、最も一般的なのが、その形が女性の乳房に似ており、慈悲深い女性が子に乳をあげている姿にちなんで慈姑とよぶという説です。「姑」は、今ではふつう「しゅうとめ」のことを指すので、「なんでしゅうとめが子供に乳をあげるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。しかし漢和辞典を引いてみればわかりますが、「姑」という文字には「婦女の通称」という意味もあるのです。ようするに昔は女性一般をさして「姑」と言っていたわけで、したがって「慈悲深い女性」の乳房の意味が通るのです。
ほかにも、くわいの葉が農作業に使う「クワ」に似ているからとか、「いぐさ」に似ているので「食えるいぐさ」という意味でくわいになったともいわれます。

くわいはその小さなみかけに似合わずとても栄養豊富な食材で、中国ではかつて漢方薬にも用いられていたともいわれます。豆類に匹敵するほどのタンパク質、カリウムやマグネシウム、リンや鉄などのミネラル類、またビタミンEなど多くのビタミン類も含みます。そのため糖尿病・便秘に効果的で、美しいお肌を保ち、ストレス防止にも役立ちます。

くわいはそのまま食べるとアクで苦いので、江戸時代になって煮たり揚げたりという調理法が庶民に普及したことも、食材として一般化する要因となったのではないかと思います。今出回っているくわいは野生ではなくほとんど栽培ものなので、アクも弱いのですが、それでもしっかりあく抜きをしないと苦みが感じられます。わたし的には、あのうっすら残る苦みがたまらなく好きなのですが。
また、デンプン質が多いため、調理法によって独特のモチモチ感やシャクシャク感が楽しめます。

なお、市販されているおせち料理に盛られているくわいの煮しめは、色よく見せるためにクチナシの実や着色料などで黄色く仕上げてあることが多いのですが、わたしは特に黄色くする必要もないだろうと思います。自然のままのほうが美味しそうに見えます。特に黄色く仕上げたい場合には、まず米のとぎ汁で下ゆでし、その後くちなしの実を煮出して作った黄色い汁を使い、しょうゆを使わずに塩で味付けして仕上げます。

精進料理 くわいの煮物

○くわいの煮しめ
1 くわい6個の皮をむき、下部を平らにして、十字に隠し包丁を入れる。
芽の先の部分は適当な長さを斜めに切り落とす。
2 多めの水に20分くらい漬けてアクを抜く。
3 水気を切ったくわいを鍋に入れ、濃いめの昆布だし150ml、酒25ml,みりん25ml、
砂糖5ml、しょう油5ml、塩少々で弱火で火が通るまで煮て、
その後20分くらい煮汁にひたしておく。
(煮しめ用に濃いめの味付けになっているが、おせち用ではなく
すぐ食べる時には砂糖を入れない)
4 うつわに3を盛り、ほうれんそうなどのおひたしを添え、煮汁をそそぐ。

スポンサーリンク
スポンサー リンク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーリンク
スポンサー リンク
Translate »